オン・ウェイレン（牧会スタッフ）によるデボーション
神は愛であられるからこそ『ゆっくり』歩まれるのです。もし神が愛でないなら、もっと速く歩かれたでしょう。愛には速度があります。それは心の速度です。霊的な速度なのです。私たちが慣れ親しんでいる科学技術の進歩による速度とは違う種類の速度です。愛の速度は『ゆっくり』ですが、愛の速度ゆえに、他のすべての速度より優れています。その愛は、私たちが気づいていようがいまいが、今現在嵐に襲われていようがいまいが、時速5キロで私たちの人生の奥深くへと続いています。その速度は私たちの歩く速度であり、それゆえ神の愛の歩く速度なのです。― 小山晃佑著「時速5キロの神」より
私たちの現代の速い速度の生活は、イエスの速度とは全く異なります。
私たちは、インターネットのスピード、宅配便や乗り物、会話など、何事も素早く手に入れることに慣れきっています。ペースが速く、生産的で効率的な社会の中で生活することは良いことですが、無意識のうちに私たちの中にせわしなく落ち着きのない心が形作られているかもしれません。
せわしなく落ち着きがなくなると、愛する人にもっと早く話してほしい、もっと早く行動してほしいと思うようになり、彼らのニーズ、愛、注意を求める叫びを見過ごしてしまいます。たとえ人の必要に気づいても、私たちのせわしない心が自分の仕事や探求をやり遂げられないことに不安を感じ、手助けをしないことがあります。
マルコ5章にあるイエスの「ゆっくりとした歩み」は、私たちの頭がいっぱいにならず、急いでいないときに、愛を示すことがいかに効果的であることを示しています。
マルコ5章で、イエスは「12年」という年月が共通する女性と少女に手を差し伸べられました。女性は12年間血液の病に苦しみ、12歳の少女は死に至る病にありました。モーセ五書によれば（レビ記15:19、民数記19:11）、二人とも汚れた者であり、彼女たちに触れた者もまた汚れた者とされました。イエスは彼女たちに神の愛を示すために海を渡られたのです。
この箇所は、パニックに陥った父親ヤイロが、瀕死の状態の娘を癒してほしいとイエスに緊急に懇願するところから始まります（マルコ5:23）。ヤイロの緊急性は、イエスを慌てさせたり、急がせたりしませんでした。イエスはいつもの愛の速度を保っておられました（言葉通り、また喩的な意味でも）。もしイエスが速度を速めて急いで行ってしまっていたら、血液の病の女性はイエスに追いつくことができなかったでしょう。私は、イエスがその女性のことを考えておられたと思いたいのです。この時、ヤイロは死に物狂いでした。自分の娘が死にそうなので、イエスを急がせ続けました。
イエスはその逆を行われたのです。
血液の病の女性が癒しを受けた後も、ゆっくりと彼女と関わりを持たれました。「だれがわたしにさわったのか」という質問は、群衆がイエスに殺到している中で、奇妙な質問でした。ですが、イエスは彼女の体を癒すだけでなく、彼女の心とたましいを癒したかったのです。そして、そのために時間をかけられました。
「娘よ」―イエスは彼女との人間関係を築かれました。
「あなたの信仰があなたを救ったのです。」―イエスは彼女を受け入れ、励まされました。
「安心して行きなさい。」―イエスはご自身の祝福を彼女に与えられました。
このときヤイロは、瀕死の娘のことで不安と心配でいっぱいだったに違いありません。ヤイロの最悪の悪夢が家のものの知らせによって現実のものとなってしまいました。「お嬢さんは亡くなりました。これ以上、先生を煩わすことがあるでしょうか」(マルコ5:35）。さまざまな感情の混乱がヤイロを襲ったに違いありません。ヤイロの深い痛みと怒り、苦悩を理解した上で 、イエスはヤイロに向かって「恐れないで、ただ信じていなさい。」と言われたのです。
もしかすると、イエスは私たちのせわしない心、恐れる心に対して同じように言っておられるのかもしれません。
恐れることはない。主が治めておられ、すべては上手くいくと。
イエスはついにヤイロの家にたどり着き、彼の娘を死からよみがえらせました。その任務が終わった後も、イエスは急ぐことなく、少女に食べるものを与えるために留まられたのです。
イエスのようにゆっくりとした速度で、焦らず、意識的に歩むことで、愛はより効果的に表されます。
あなたの両親、子供たち、配偶者、友人のために、どうぞ速度を落として下さい。彼らにはあなたの愛と気遣いが必要なのです。
イエスの愛を受け取り、主にある安息を見出すために、あなた自身のために速度を落として下さい。
イエスは、疲れた人、重荷を負っている人に、主のくびきを負うよう招いておられます。そうすれば、神の安息の中で人生を送ることができるのです。（マタイ11:28）。しかし神のくびきを負うためには、神と同じ歩調で歩まなければなりません（言葉通り、また比喩的な意味でも）。
私たちは、イエスとともに歩み、イエスのゆっくりとした愛の速度でくびきを負うのです。あなた自身が、せわしなく疲れたたましいが癒され、そして、あなたの周りの人々は、あなたの愛を通して、イエスの中に癒しを見出すことができるのです。